大浦川河口の鳥獣保護区(特別保護地区)の指定を求める要望書

 ラムサール・ネットワーク日本(ラムネットJ)は、じゅごんの里、Okinawa Environmental Justice Project、日本自然保護協会と連名で、以下の「大浦川河口の鳥獣保護区(特別保護地区)の指定を求める要望書」を、2021年6月4日に沖縄県知事に提出しました。


2021年6月4日
沖縄県知事
 玉城 デニー 様

大浦川河口の鳥獣保護区(特別保護地区)の指定を求める要望書

じゅごんの里
 代表 東恩納 琢磨
Okinawa Environmental Justice Project
 代表 吉川 秀樹
公益財団法人 日本自然保護協会
 理事長 亀山 章
ラムサール・ネットワーク日本
 共同代表 陣内 隆之・金井 裕
      上野山 雅子・高橋 久
      永井 光弘

 私たちは辺野古・大浦湾の保全に長く関わってきた立場から、以下のことを要望いたします。

 2019年10月に米国NGO ミッションブルーにより辺野古・大浦湾一帯がホープスポット(Hope Spot:希望の海)に認定され、この海域一帯の価値が世界に認められたことを受けて、沖縄県の権限でこの海域の保全を強化する要望を出すことについての賛同者をインターネットと紙媒体にて国内外から集めたところ、合計25,925名(インターネット21,296名、紙媒体4,629名)の声が寄せられました。
 辺野古・大浦湾は、サンゴ群集、マングローブ、海草藻場、砂場、ガレ場と多様な環境をもっています。それらは、大浦川と汀間川のそれぞれの流域に広がる山原の森林から大浦湾に流入する栄養塩類が、サンゴ礁生態系に及び、サンゴや他の生物を支えていることによるものです。なかでも名護市指定文化財であるマングローブ林を擁する大浦川河口は、森の養分を海に運ぶ重要な役割を担うとともに、川と海を回遊する多くの生き物の生息域となっています。アダンベンケイガニ(Scandarma lintou Schubart, Liu & Cuesta, 2003)などの絶滅危惧種や希少種も生息しています。
 これらのことから大浦川はラムサール条約登録潜在候補地(環境省、2010年)に選ばれており、基準3として「メヒルギ、オヒルギ、ヤエヤマヒルギからなるマングローブ樹種の地理的に数少ない重要な分布地であること」、基準3,7,8として「河口にはマングローブ林が発達し、マングローブ性魚類の種の多様性が高いこと」が選定の理由とされています。
 また、大浦川河口は沖縄県の「大浦川地区保全利用協定」の対象地域となっており、地域の自然資源を持続的に利用するために、協議会を組織し、モニタリングを行い、生物多様性を保全することが義務付けられているモデル地域ですが、沖合で進んでいる埋め立て工事の影響が懸念されます。
 以上のような理由から、貴重な自然資源をより効果的かつ持続的に利用するために、大浦川河口域を沖縄県の鳥獣保護区および特別保護地区に指定できるよう次期の鳥獣保護管理事業計画に含め、ラムサール条約登録を目指すことを要望いたします。
以上

参考:
1)環境省(平成22年)ラムサール条約湿地潜在候補地の選定について
https://www.env.go.jp/press/12982.html
2)日本サンゴ礁学会保全委員会(2015年)大浦マングローブ林自然体験施設整備事業についての要望書
http://www.jcrs.jp/wp/wp-content/uploads/2015/03/502d699e70c89dc34db288222a891ebc.pdf
3)名護市(2013)大浦マングローブ林体験学習施設基本計画策定業務報告書

2021年06月12日掲載