書籍「シジュウカラガン物語」のご紹介

日本雁を保護する会会長/ラムネットJ理事 呉地正行

 日本へ渡来するシジュウカラガンは、環境省のレッドデータブックの絶滅危惧IA類、種の保存法の国内希少野生動植物種として厚く保護されている希少種です。かつて中部千島で営巣し、仙台周辺を中心に日本で多数越冬していました。しかし、20世紀初頭に当時日本領の千島列島に、日本政府が多数のキツネ類を毛皮目的で放し、それらのキツネに捕食されたシジュウカラガンはほぼ絶滅してしまいました。
 絶滅の淵に追い込まれたシジュウカラガンを復活させる取り組みが、日本雁を保護する会の呼びかけで1980年から始まり、民間主導の日ロ米3カ国国際共同事業として継続し、長い年月をかけて日本へ渡る群れの復活に成功し、その飛来数は数羽から一万羽近くまで増加しました。そして、2021年1月には、1935年頃までシジュウカラガンの歴史的越冬地だった仙台市周辺の七北田低地に舞い降りた小群が、86年ぶりに確認されました。
 シジュウカラガン回復計画のゴールは、シジュウカラガンのかつての生息地にその群れをよみがえらせることです。今回仙台市周辺の歴史的越冬地でシジュウカラガンが発見されたことにより、1980年代に着手したシジュウカラガン羽数回復事業は40年の年月をかけ、そのゴールに限りなく近づくことができました。
 この40年間のシジュウカラガン復活の歩みを、一冊の本にまとめた、「シジュウカラガン物語~しあわせを運ぶ渡り鳥、日本の空にふたたび!」[呉地正行+須川恒(日本雁を保護する会)編]が、本年7月15日に京都通信社から発売されました。2020年に日本雁を保護する会は創立50年を迎え、この本は、保護する会の50周年記念出版も兼ねています。
 本書はA5判304ページ、10章構成で、回復事業が始まった経緯から、日ロ米での実際の取り組み、課題の解決とその成果、未来に向けての取り組み等で構成され、口絵のカラー写真では、さまざまな場面が紹介されています。またこの本は、強い思いが不可能と思われていた道を切り拓くことができるというメッセージを読者の皆さんに送る本でもあります。ぜひ多くの方に読んでいただきたいと願っています。

■■■■■■

発行:京都通信社
http://www.kyoto-info.com/kyoto/books/otherbooks/shijukaragan
定価:2970円(税込)
問い合わせ:日本雁を保護する会 TEL 0228-32-2004

2021年12月12日掲載