「ポスト2020生物多様性世界枠組」について

ラムネットJ理事 安藤よしの

■ポスト2020枠組決定への道筋
 中国・昆明市で開催予定の生物多様性条約COP15は新型コロナウイルスの世界的な流行により、何回も延期されました。2021年10月11日~15日、対面とオンラインのハイブリッドで開催されたCOP15フェーズ1で公表された最新のスケジュールによると、「ポスト2020目標」は、2022年1月にスイスのジュネーブにおいて対面で開催予定のSBSTTA24/SBI3(第24回生物多様性条約科学技術助言補助機関会合/第3回生物多様性条約実施補助機関会合)とOEWG3(ポスト2020生物多様性世界枠組に関する公開作業部会)の続編での議論をもとに文書がまとめられ、COP15フェーズ2(2022年4月~5月、昆明で対面で開催)で決定される予定となっています。

■ポスト2020枠組の構造(表参照:環境省資料)
 世界目標枠組は以下のような構成となっています。
 2050年ビジョン「自然と共生する世界」/ビジョン実現を目指す2030年ミッション「地球と人類の恩恵のために、生物多様性を回復の軌道に乗せるため、緊急な行動を社会全体で起こす」/ビジョン達成のための4つ(A~D)の長期ゴールとそれぞれのゴールの進捗度評価のための2030年マイルストーン/計21の2030年ターゲット(取るべき行動)
 ゴールA・マイルストーンAはいわゆる「保全」、ゴールB・マイルストーンBはSDGsを意識した「持続可能な利用」、ゴールC・マイルストーンCは「ABS(遺伝資源から生じる利益の公正かつ衡平な分配)」、ゴールD・マイルストーンDは「ビジョン達成のための手段」となっています。
 2050年ビジョン「自然と共生する世界」は愛知目標のままで、2030年ミッションは、達成できなかった(行動との結びつきが十分に示されてはいなかった)愛知目標の反省もあり、『生物多様性を回復の軌道に乗せるため、社会全体で緊急な行動を起こす』こととされています。

post2020.jpg

■湿地保全との関係からみるターゲット
 2030年ターゲット(取るべき行動)のうち、湿地保全活動に携わる私たちに直接関係するのは、「a脅威の縮小」のターゲット
 2・3・4・6・7・8、「b人々の要請に応える」のターゲット10・11・12、「cツールと解決策」のターゲット16・18・20などと考えられます。生物多様性を回復の軌道に乗せるためにはすべてのセクターの「緊急な行動」が必要です。2030年に向け、私たちはどのような緊急の行動を取るべきでしょうか。
 今後この1次ドラフトへは修正が入り、正式の決定は来年4月~5月のCBD COP15フェーズ2まで待たねばなりませんが、ラムネットJでもポスト2020目標を分析し、実行していくことが大切だと思います。さらに、現在日本で策定作業中の「生物多様性国家戦略」に関しては、このポスト2020年目標を意欲的に組み込み、実施に向けて最大限の努力をするように政府に働きかけることも大切です。なお、ラムネットJの水田部会では、このポスト2020世界目標枠組ドラフトを基に「田んぼの生物・文化多様性2030プロジェクト」の行動計画を策定中です。12月12日に小山市で開催予定のキックオフ集会で、新たな参加者を募り、田んぼをフィールドにポスト2020目標の達成に向けて動き出す予定です。

ラムネットJニュースレターVol.45より転載)

2021年12月12日掲載