湿地巡り:王越とんぼランド(香川県)
王越とんぼプロジェクト実行委員会 三浦大樹
"王越とんぼランド"は、香川県の北部、坂出市王越町にあります。王越町は南を五色台と呼ばれる山塊、北を瀬戸内海に挟まれた地域で、以前は瀬戸内海の至る所で見られた塩田の面影をしのぶことができる数少ない場所です。そんな王越町も全国の農村と同じく過疎化の進行により耕作放棄地が増え、昔はたくさんいたトンボも数を減らしました。
そのことを憂慮した地域住民が王越を再びトンボの群れ飛ぶ里にするため、1993年に王越自然界倶楽部を立ち上げ、"王越とんぼランド"と名付けた耕作放棄地でトンボの保護活動を開始しました。その後、2018年には専門家や自治体も加わった"王越とんぼプロジェクト実行委員会"が発足しました。
7月に開催した観察会の様子
本委員会では、王越とんぼランドをトンボが生息しやすい環境にするべく、乾燥化が進みつつあった耕作放棄地に水路や池を作り、トンボが産卵できるような開放水面を設けました。また、子供たちがトンボなどの生き物と安全に触れ合える場を作るため、長さ100m以上の木道や案内看板などを整備しました。その上で、坂出市内の小学生を対象とした観察会の開催やパンフレットの作成、広報誌への掲載、マスコミの取材など、啓発活動にも努めてきました。
親子で協力して作った杉の木の虫かご
なお、王越とんぼランドでは、2017年に香川県ではおよそ60年ぶりとなるコガタノゲンゴロウが発見されました(未公表)。また、珍しいトンボを見かけることもあります。しかし、王越とんぼランドの主な目的は希少生物の保護ではありません。失われつつある里山の環境を保護し、トンボを捕まえるなど里山で遊んだ体験を今の子供たちに体験してもらえる場になることです。捕まえたトンボから指先に伝わる力強さなどを通じ、身近な自然を感じることは自然保護や環境保全の第一歩です。今後も環境教育の拠点として王越とんぼランドを活用していきたいと考えています。
(ラムネットJニュースレターVol.49より転載)
2022年11月17日掲載