報告:第17回日韓NGO湿地フォーラム

ラムネットJ共同代表 永井光弘

コウノトリの巣塔

コウノトリの巣塔

 日韓NGO湿地フォーラムは、日本のラムネットJと韓国の韓国湿地NGOネットワーク(KWNN)が、毎年交替で主催しています。その時々の両国の湿地にかかわるさまざまな問題をとりあげ、情報交換・意見交換しています。昨年度は日本主催で、2023年3月25日、26日に長崎県対馬市で行われました。
 今回、例年とは2点違った点がありました。ひとつは、開催時期が年度終わりとなったことです。2022年中はラムサール条約COP14(ジュネーブ/武漢)、生物多様性条約COP15(モントリオール/昆明)と、ラムネットJと関連する国際会議が立て続けに開催され、余裕がなかったためです。もうひとつは、コウノトリの野生復帰を進める日韓のNGOと共催したことです。韓国コウノトリ愛の会と日本コウノトリの会は、交流を重ねながらコウノトリ野生復帰促進事業を進めてきており、今回、対馬市の佐護地区に共同で巣塔を設置しています。日本コウノトリの会の代表でラムネットJ理事でもある佐竹節夫さんからお声掛けいただき、KWNNとともに巣塔設置をお祝いする意味もかねて共同開催となりました。
 対馬に渡航する高速艇については日・韓ともにコロナの制限がかかっており、直前まで開催そのものが危ぶまれていましたが、なんとか開催にこぎつけました(こんなことも、すぐ思い出話になるんでしょうね)。


フォーラムに参加したみなさん
フォーラムに参加したみなさん


 フォーラムでは、まず、第1部として日韓コウノトリ交流会(巣塔設置記念発表会)を行いました。韓国から「韓国でのコウノトリ野生復帰事業の状況」の報告(韓国環境生態研究所所長:イー・シワンさん)、写真を多用した「人と共生するコウノトリ」の報告(コウノトリ愛の会:キム・ギョンソンさん)、日本から「日本でのコウノトリ野生復帰促進の進展と課題」という最新の報告(日本コウノトリの会:永瀬倖大さん)がありました。
 第2部は日韓NGO湿地フォーラムとして報告・発表が行われました。日本からは、ビデオレターによる「渡良瀬遊水地での賢明な利用を目指す取り組み」の報告(小山市:浅野正富市長)、猛威をふるった鳥インフルに関連し「高病原性鳥インフルエンザと湿地保全」の報告(ラムネットJ:金井裕さん)、そしてラムサールCOP14採択のユース決議に関連し「ユース決議の可能性と展開」(ラムネットJ:永井)の報告がありました。他方、韓国からは、「洛東江河口の危機と韓・日市民社会の協力強化」の報告(KWNN:パク・チュンロクさん)、「金海・花浦川湿地の現況とコウノトリ」の報告(イ・チャヌさん)、「セマングム開発政策と保存運動」の報告(KWNN:オ・ドンピルさん)がありました。湿地フォーラムでも、できるだけコウノトリに寄せた報告ラインナップとなりました。
 その晩の懇親会では、日本と韓国、湿地とコウノトリといういろいろな関係者がお互いに情報交換する場ができ、お酒を飲みながら楽しく交流ができました。
 翌日は、めいめいのグループが、それぞれ完成した佐護地区のコウノトリ巣塔見学や、環境省・対馬野生生物保護センター(ツシマヤマネコの保護をしています)の見学などを行い、その後帰路につきました。
 来年の湿地フォーラムは、韓国で対面開催される予定であり、開催に向けてこれからテーマ選定の協議を進めていきたいと思います。

ラムネットJニュースレターVol.52より転載)

2023年08月16日掲載