湿地巡り:大阪南港野鳥園(大阪府)
NPO法人南港ウェットランドグループ 和田太一
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大阪南港野鳥園は、大阪市住之江区の南港埋め立て地(咲洲)に整備された19.3haの野鳥公園で、大阪湾奥部に位置し、護岸を介して大阪湾に面しています。戦後に南港の埋め立てが進む中で生息地を追われていく水鳥を守る住民運動が1969年にはじまり、それを受けて大阪市が野鳥園の設置を決定し、1983年に開園した国内で最も古い人工干潟のひとつで、今年9月で開園40周年を迎えました。
園内には干潟・ヨシ原・カキ礁・磯・汽水池など多様な湿地環境があり、展望塔や観察所から湿地に飛来した水鳥を観察できます。春・秋の渡りの季節にはメダイチドリやトウネンなどのシギ・チドリ類(これまで55種を観察)でにぎわい、冬場はツクシガモなど越冬のカモ類やヘラサギ、ミサゴやチュウヒなどのタカ類も観察されます。干潟ではハクセンシオマネキなどの底生生物も200種類以上が確認されており、埋め立てによって干潟が大きく失われた大阪湾で貴重な生息地となっています。2001年には環境省の「日本の重要湿地500」に人工干潟としては唯一選定され、2003年には「東アジア・オーストラリア地域シギ・チドリ類重要生息地ネットワーク(現EAAFP)の参加登録地になるなど、国内外で重要な湿地として認められています。
園内の北池干潟
埋め立て地の中に造成された人工干潟は自然干潟とは環境条件が大きく異なります。干潟を覆う緑藻アオサの繁茂や減少、カキ礁の拡大、干潟表層部の泥の流出、地盤沈下などさまざまな環境変化や課題が出てきます。当NPOではモニタリング調査を行って常に環境を監視し、多くの生き物が利用できる環境を維持するための保全作業を行っています。来園者には渡り鳥や干潟の生き物の観察会、年間36回の野鳥ガイドを実施しているほか、地元の中学・高校生が環境学習の場として活用しており、大阪市内で海辺の自然を知ることができる貴重な場所になっています。
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干潟に飛来したトウネンの群れ
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ゴカイを捕食するメダイチドリ
(ラムネットJニュースレターVol.53より転載)
2023年11月12日掲載