第6回 生物の多様性を育む農業国際会議ICEBA2023 ~報告とその背景~
NPO法人田んぼ/ラムネットJ理事 舩橋玲二
田んぼは多様な生きものを育むことができ、日本の田んぼからは6000種以上の生きものが確認されています。しかし、農薬の使用や圃場整備の進展など、生きものが棲みにくくなってきたことも否定できません。湿地を利用する田んぼは、多くの生きものに囲まれながらコメを生産し続けられるすばらしい環境です。生業としての農業と地域の自然環境を両立させること、その実現には何が必要かを議論する場としてICEBA(International Conference for Enhancing the Biodiversity in Agriculture)は始まりました。
第1分科会会場のトキ交流会館
第6回生物の多様性を育む農業国際会議ICEBA2023が2023年11月18~19日に開催されました。佐渡市のあいぽーと佐渡をメイン会場とし、3つの分科会は別々の会場に分かれて行われました。
筆者はトキ交流会館を会場にした第1分科会「生物の多様性を育む農業のすすめ」の副座長として参加しました。各地の事例紹介として、筆者は宮城県大崎耕土の認証米の取り組み、徳島県小松島市の茨木昭行さんからは地域ぐるみの生物多様性農業の取り組み、石川県羽咋市の農家である濱田栄治さんからは省エネや脱プラスチック等、環境負荷低減の取り組み、地元佐渡市の佐々木邦基さんからは子どもや保護者への食育や田んぼでの体験活動について報告がありました。
各地の熱を帯びた報告から、生きものを育む農業によって地域づくりを進めるためには、生きものの生息場所となるビオトープや移動経路となる魚道の設置で改善すること、機械化した現在の農業の中で生きものを育み環境負荷を減らすために工夫を重ねること、環境を守るための活動を支えるための認証制度や所得補償といった仕組みを整えること、農協や生協などが生きものを育んでいる農産物を消費者へ届けること、生きものを育む農業が食の安全・安心に直結し、持続的な地域づくりにつながっていることを食育や体験活動によってより多くの人に理解を拡げ、支援してもらうことなど、非常に多岐にわたる課題が再確認できました。
自然栽培圃場の看板
佐渡では生きものを育む農業への挑戦が続いています。
自然栽培圃場の看板
佐渡では生きものを育む農業への挑戦が続いています。
日本の農業は農業者の高齢化、後継者不足、生物多様性の低下に加え、気候変動対策として脱炭素やメタン発生抑制にも対応すべきとのことで、大きな変革が求められています。現在提案されている気候変動対策の中には、生きものを大きく減らしてしまうような手法も見られます。このようなトレードオフによって将来に禍根を残すことのないよう、今後、ICEBAの果たすべき役割は大きくなっているといえるでしょう。
ICEBA2023に関する情報は下記にもありますので、ぜひご活用ください。
(ラムネットJニュースレターVol.54より転載)
2024年02月10日掲載