ラムネットJ沖縄ツアーとシンポジウム「湿地保全と私たちの社会」
●主 催:ラムネットJ、泡瀬干潟を守る連絡会
●開催日:2011年6月24~27日
ラムネットJでは、各地の活動を支援しネットワークを強くしていく一環として、毎年の総会を各地で行うことにしました。今年は、埋立再開が懸念される泡瀬干潟の保全を応援するために、沖縄市で総会とシンポジウムを行いました。また、ヘリパット建設で揺れるやんばるの森や米軍基地移転問題を抱える辺野古などを視察するツアーも行いました。

高江のテント村
●ツアー初日(6月24日)
まずは森林破壊の一つである大保ダムを視察。続いて、高江のテント村を訪れ、ヘリパットいらない住民の会の皆さんのお話を伺いました。沖縄防衛局の理不尽な行動には怒りがこみ上げてきます。夜は廃校になった校舎を利用した宿泊施設に泊まり、やんばるの森観察へ。ところが、あいにくの台風に見舞われ、急激な土砂降りでやむなく中止に。やんばる自然案内の方のお話は、やんばるの森がいかに生物多様性に富んでいたかを知ることができただけに、実際に森の観察ができなかったことが悔やまれてなりません。
●ツアー2日目(6月25日)
台風の影響で辺野古の海の視察は中止に。ヘリ基地反対協議会の方々には、台風の中、私たちの到着を待っていただき本当に恐縮です。丁寧なお話をありがとうございました。この日は、ほかに「慶佐次のマングローブ」や板根が特徴的な「安波のサキシマスオウノキ」などを見て回りました。

辺野古の壁

辺野古のテント

辺野古での集合写真

サキシマスオウノキ
●ツアー3日目~総会とシンポジウム(6月26日)
総会では各地からの報告も行い、ラムサール登録地の漫湖周辺の火葬場問題を知ることができました。
シンポジウムの第一部は「無駄な公共事業と環境アセスメント?泡瀬から変えよう!」と題して、泡瀬干潟埋立問題と環境アセスメント制度の課題について報告がありました。
1)泡瀬干潟には以前、広大な海草藻場が約56ヘクタールあったこと
2)2001年からの国による海草移植実験はことごとく失敗し藻場が消失したこと
3)アセスは完全に破綻し重大な環境破壊が起こっているのに、責任を取ろうともせず埋立工事を再開しようとしていること
4)工事中断で少しずつ海草は回復していること
5)新しい事業計画においても需要予測が甘く土地利用計画に合理性がないこと
6)計画変更に伴う公有水面埋立の変更手続きにおいて環境アセスが実施されないこと
などが報告されました。
また、博多湾人工島埋立事業と諫早湾干拓事業の経験を踏まえた堀弁護士の報告では、紛争の本質を正しくとらえ正義の実現に向けて「私たちは負けない。なぜなら勝つまで闘うからだ。」という不退転の決意を持つことが不可欠であるという教訓を聞くことができました。大久保規子・阪大教授による「日本の環境アセスメント制度の現状と課題」の報告では、日本のアセス訴訟の特徴や課題などをお話いただきましたが、たいへん濃密な内容でした。
そして最後に、無駄で有害な公共事業を日本から無くすため、泡瀬干潟埋め立てを止めていこう!と確認し合いました。
シンポ第2部は「ユースの力で変えよう!?Good practice from okinawa」と題して、世代交代が進まないNGOの悩みに対するヒントを、次代を担う若者から学びました。
1)子どもの頃の自然体験がベースになり、愛着のある場所を持つ
2)住民運動の場が自分を育てる場になっている
3)メンバーの想いを実現する場になっている
4)若者を許容すること、若者に任せること
といったコメントが心に残りました。
夜は、連絡会の屋良さんが館長を務める博物館カフェ「ウミエラ館」で懇親会。ここは泡瀬干潟を180度のパノラマで展望することができる素敵な場所でした。貝のコレクションや様々なグッズも魅力的。地元の皆さんと歌ありトークありの楽しい交流ができました。

ウミエラ館から眺めた泡瀬干潟

シンポジウムの会場
●ツアー最終日(6月27日)
いよいよ泡瀬視察。とは言え時間もあまりないので、干潟の観察は次回に回し、勝連城址から全体を俯瞰した後、新港地区を視察。至るところ空き地ばかりで、船を利用する会社は一つもなく、それでも航路浚渫を行う国。その浚渫土が泡瀬干潟を埋めていくのだと思うと、やるせなくなります。
午後は、船に乗って浅海域を観察。サンゴがいっぱいの海を目の当たりにして、干潟域とはまた違う生物相に、泡瀬干潟の生物多様性を実感しました。1区を囲む堤防も海側から見ましたが、人工ビーチなど作るより天然の干潟で遊ぶ方がずっと楽しいのにね。囲われた堤防の内側には今も多くの生き物が苦しんでいます。一日も早く囲いを解いて、泡瀬干潟を未来に引き継いでいきたいと想いを新たにしました。

勝連城址での集合写真

泡瀬干潟埋め立てで建設中の人工ビーチ

新港地区FTZ
(報告:ラムネットJ・事業ネットワーク部会 陣内隆之)